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一人で生きるということ

訪問診療の利用者さんには、一人暮らしの方が何人もおられます。

住み慣れた場所で、自分のペースで生活したいという思いを支えたいというのは、私たちのミッションでもあります。


里山の集落に一人で暮らしている97歳の女性。

お子さんたちは独立し、家を出ています。

20年前にご主人もなくなり、それからの一人暮らし。

病気で入院するたびに、施設やショートステイも提案されましたが、家がいいと拒否。


元々お料理がが好きで、広めのキッチンには愛用の道具が並んでいます。

いつも伺うのはお昼過ぎ。

大好きなうどんのお出汁の香りが漂います。

「最近あんまり欲しない。お汁だけ飲んだ」と言いつつも、習慣なんでしょうね。

毎日台所に立っているのがわかります。


お汁はちょっとしょっぱめがお好きとか。

「塩辛いお汁や、水分を摂りすぎること、体重のことなどいっつも怒られて喧嘩になる」笑

そんなお小言を言ってくれるのは、40年来のお付き合いのある看護師さん。

今は訪問看護師として毎日のように顔を見せてくれるのが楽しみだと言います。


ありがたいと思っているのに、会えば強がりやわがままで困らしてしまうんですって。

「あんた代わりにお礼言っといて」なんて茶目っ気たっぷりにお願いされました。


今年の冬は3年前ほどではないけれど、かなりの積雪がありました。

古いお家は庭も屋根もすっぽり雪に覆われるほど。

ですが訪問した時にはたっぷりのお湯がストーブの上で湯気をあげていてぽかぽか。

その前に寝間着とバスタオルが温まっていました。

灯油は看護師さんが補充してくれる。

隣近所の人も、毎日玄関まで入って声をかけてくれるのだと言います。


思い出の詰まったこの家で、最後まで暮らしたい。

その思いを、ご家族もご近所さんも、在宅チームも一緒に支えています。

「もういつ死んでもいいわ」そんなセリフも出るけれど、私たちに見せてくれる笑顔はまだ元気。

最近心臓に負担がかかり、むくみが出たり息切れがしたり。

このところベッドで横になっている時間が増えています。

でもトイレは自分で行ける。お風呂はちょっとやめとこうか、と無理しない。

介護サービスは入れるけれど、できるだけ自分でやりたいという気持ちも大事に。


一人じゃない一人暮らし。

絆の中で人は活かされるのだと、彼女の暮らしを通して感じています。





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